作者:高鹏飞,平山崇 日期:2016-01-18 12:21:48
日本において現存する最古の文献は『古事記』とされる。この書物は周知のように、全文が中国の文字で記されており、日本文学と中国語が上代から密接な繋がりをもっていたことを示している。古代日本では中国語の変化に伴い、平安時代初期に典籍を漢音で読むことがさかんになると、日本語の内に拗音や音便が生じた。また漢字から片仮名や平仮名が作られていった。古代の詩はもちろん、『万葉集』に集められた和歌も、また『源氏物語』などの物語も、中世の鴨長明『方丈記』などの随筆、近世の曲亭馬琴の読本も、みな中国から渡来した文化の影響を受けながら成立したものである。近現代には欧米からの影響を強く受けるが、夏目漱石や芥川龍之介、川端康成らの小説にも中国文化の影は深く射している。日本語と日本文学の歴史は、実に長いあいだ、中国語と中国文学の影響を受けながら独自に展開してきたのである。