作者:つげ義春 日期:2017-01-10 15:32:54
この本は凄い。なにが凄いってこだわりが凄い。まず大きさだが当時のガロと同じ大きさなのである。それからタイトルにもなっている「ねじ式」がオリジナルの修正前(眼科の看板の文字が眠科のまま)だったり、2色でそのまま掲載されているのだ。
それから「ねじ式」を例外として後の代表作はすべて発表された順番に掲載されている。
「沼」「チーコ」から「李さん一家」「紅い花」「ゲンセンカン主人」そして「やなぎや主人」へとつながる。(出版社の問題でガロ時代のみ)
つげ義春の作品はほとんどが短編で、今まで出版された単行本では、それぞれ代表作が重複して掲載されていたり、順番が滅茶苦茶だったりと不満点があったのだがそれを解消している。
オマケに巻末にはエッセイ3つと解説?資料として今まで出版された単行本のリスト、彼の年譜がついていて資料としての価値もあります。
話は変わって「ねじ式」についてだが、今の若い人にもつげ義春は知られている。しかしほとんどの人が「ねじ式」が好きと言う。というか「ねじ式」しかしらない人がほとんど。映画化されたり、色々なところでパロディされていてある意味記号的な扱いをされているような気がする。この本もただの「ねじ式」という名前で出版されたのもそうすれば売れるからなのだろうか。
僕は確かに「ねじ式」は1コマ1コマ、セリフ一つとっても頭にこびりつく程強烈だとは思うが、つげ義春を代表する作品だとは思えない。個人的に「ねじ式」より好きな作品は沢山あります。
冷静に考えてみたらこの本はそういった若い人につげ世界を知らせるいい本なのかも。とにかく1家に1册!!
出版社 / 著者からの内容紹介
▼第1話/ねじ式▼第2話/沼▼第3話/チーコ▼第4話/初茸がり▼第5話/山椒魚▼第6話/峠の犬▼第7話/噂の武士▼第8話/オンドル小屋▼第9話/ゲンセンカン主人▼第10話/長八の宿▼第11話/大場電気鍍金工業所▼第12話/ヨシボーの犯罪▼第13話/少年▼第14話/ある無名作家●あらすじ/1間の狭苦しいアパートに住む夫婦。売れない漫画家の夫を、ホステスをする妻が養っている。その妻がある日、夫に向かって「文鳥が飼いたい」と言い出した。夫は渋るが、お金まで用意していた妻に押され、彼らは連れだって文鳥を買いに行く。いつしか「チーコ」と名付けられたその文鳥は、しだいに夫にも可愛がられるようになっていた。そんなある日、夫は遊んでいる最中に、誤ってチーコを床にたたき付け、死なせてしまう(第3話)。▼温泉にやってきた武士?平田は、泊まった宿で相部屋を言い渡される。部屋に入ってきた男は異相の持ち主であり、かつ何気ない動作にもすきがなく、平田の目にはいっぱしの武芸者と映った。その後も平田は彼の振る舞いを観察し続け、確信をもって「彼は宮本武蔵である」と宿の主人に告げる。主人がそのことを触れ回った結果、宿にはたちまち近所から客が押し寄せ、超満員となったのだが…(第7話)。▼漫画家をしている安井のもとに、かつてアシスタントをしていたときの同僚?奥田が訪ねてきた。彼はアシスタントの仕事では自己表現ができないと考え、安井と入れ違いのように辞めてしまっていたのだ。しかしその後もつきあいは細々と続き、その間に奥田はバーテンを経由して、挙句にトルコ嬢のひもに成り下がっていた(第14話)。●その他DATA/解説?佐野史郎
出版社からのコメント
誰もが経験したことがあるような悪夢の世界を再現し、コミック界に金字塔を打ち立てた「ねじ式」をはじめ、作者の代表作ばかりを集めた短編集。巻末に、映画『ゲンセンカン主人』に主演した俳優/佐野史郎の解説を掲載。
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作者简介:
つげ義春 (YOSHIHARU TSUGE )
1937年東京の葛飾に生まれる。
5歳の時に父親に死なれ、母と兄弟達(弟の忠男も漫画家)と転居しながら極貧生活を送る。9歳の時に母が再婚し、義父が来るが虐待にあう。
小学校卒業後、進学せずにメッキ工場に就職。あまりにもの重労働に遅れる給料の支払い、何度も逃げ出したりした。そのような生い立ちのせいか対人恐怖症でもあり、人とあまりかかわらなくてもいい漫画家になろうと思い漫画家になった。
水木しげるのアシスタントなどをしつつ、ガロにて「沼」「チーコ」などを発表。それまでの漫画表現にとらわれない新しい世界を作る。
70年代の学生紛争まっただ中の時代は「ガロ」とつげは若者にとってかかせないアイテムであった。
その後、精神衰弱もひどくなり徐々に漫画を描くペースが落ち、80年代半ばを最後に休筆中。カメラ屋や骨董屋をやったりしたが続かず、現在はのんびりとした生活を送っているらしい